ラ・メールのメンバーに薦められ、新進気鋭のマルクス主義者斎藤幸平の「人(ひと)新世の『資本論』」を読みました。高齢化で錆びついた頭にはハードルが高かったのですが、「SDGsは『大衆のアヘン』である!」との書き出しに惹かれ何とか読了しました。

●   SDGsは「大衆のアヘン」である

●   産業革命以降、人は大量の化石燃料を使用し、膨大な二酸化炭素を排出しています

 産業革命以前は280ppmだった大気中の二酸化炭素濃度が、2016年には南極でも400ppmを超えて今も増え続けています。そして二酸化炭素の温室効果で気温上昇が続いていますが、2016年に発効したパリ協定は、2100年までの気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満 に抑え込む目標ですが、2025年にはすでに世界の平均気温が約1.5℃上昇しています。もし現在の排出ペースを続ければ、2100年には4℃以上の気温上昇が危惧されます。

●   日本は二酸化炭素排出量が世界で5番目に多く、人口当たりでは世界3位と多い

JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)資料から抜粋

 

2022年の世界の二酸化炭素排出量を国別に見ると、第1位が中国、第2位がアメリカ、第3位がインドとなっています。中国とアメリカの排出量を合計すると、世界の排出量の約45%を占めており、上位10カ国の排出量を合計すると約70%を占めている状況です。日本の排出量は世界第5位で世界の約2.9%を占めています。

2022年におけるエネルギー排出量が多い7カ国 の年間の一人当たりエネルギー起源二酸化炭素排出量は、多い順にアメリカ、ロシア、日本、中国と続いています。対照的に開発途上国、特に後発開発途上国(LDCs)に至っては、日本の約9分の1である0.89トン/人程度という状況です。

1989年に冷戦が終了し、天安門事件、ベルリンの壁崩壊と世界は資本主義体制に移行してきました。国連環境計画(UNEP)が2025年11月に発表した「排出ギャップ報告書2025」によると、1990年から2024年までの34年間で世界の二酸化炭素排出量は378億トンから577億トンへと増加しかつ増加傾向は加速しています。2024年は前年比で2.3%の増加を記録し、2010年代の増加率0.6%を大きく上回っています。

開発途上国の著しい経済成長のために二酸化炭素の排出量が増え続けているのですが、先進国でもアメリカの排出量は年率1.6%ずつ増えています。気候変動が将来の世代に与える影響の大きさを考えると私たち現役世代が無関心でいることは許されず、「大きな変化」をはっきりと求め起こしていく必要があります。

●   世界の富裕層が排出する大量の二酸化炭素

 二酸化炭素の排出量を抑えるには、これまでの経済成長を支えてきた大量生産・大量消費そのものを抜本的に見直さなければなりません。大量消費による二酸化炭素の排出は裕福な生活様式の過剰消費と密接に結びついています。世界の富裕層トップ10%が二酸化炭素の半分を排出しているという驚くべきデータもあります。先進国で暮らす日本人は大勢がそのトップ10%に、ほとんどが20%に入っています。私たち自身も抜本的に生活様式を変えていかなければなりません。

●   資本主義は大量生産・大量消費を追求して地球規模であらゆるものを収奪しています

 資本主義は利潤を求めて地球規模で市場拡大を図り、大量生産のために環境・資源・エネルギー・食料を浪費します。人類が使用した化石燃料の約半分は冷戦が終結した1989年以降のものなのです。各国がパリ協定を守ったとしても気温は3.3℃上昇するという指摘もあります。2018年のCOP24でスェーデンの環境活動家グレタトゥーンベリ(15才)は、「これまでの暮らしを続けられるような解決策はもうありません、システムそのものを変えるべきです。」と国連での演説を締めくくっています。

〇 二酸化炭素排出量を2030年までにほぼ半減させ、2050年までに純排出量をゼロに

 2~3%のGDP成長率を維持しつつ1.5℃目標を達成するためには、二酸化炭素排出量を今すぐにでも年10%前後のペースで削減する必要があります。しかし資本主義体制の下で市場に任せたままでは、実現する可能性がどこにもないのは明らかなのです。

〇 ある程度経済成長すると幸福度と明確な相関関係が見られなくなります

 一人当たりのGDPがアメリカより低いヨーロッパ諸国の多くは、社会福祉の全般の水準がずっと高く、日本も一人当たりのGDPはアメリカよりずっと低いのですが、平均寿命はアメリカより8歳近く長い状況です。経済成長しなくても既存社会のリソースをうまく分配さえできれば、社会は今以上に繁栄を感じられる可能性があると言えます。

〇 「脱成長」あるいは「定常型経済」への移行を

 資本主義は価値増殖と資本蓄積のためにさらなる市場を絶えず開拓していくシステムです。環境への負荷を外部へ転嫁しながら自然と人間からの収奪をおこなってきました。気候変動などの環境危機が深刻化することさえも利潤獲得のチャンスとしてきました。環境危機に立ち向かい経済成長を抑制する唯一の方法は、私達の手で資本主義を止め脱成長型のポスト資本主義に向けて大転換することです。GDPに必ずしも反映されない万人の繁栄や生活の質に重きを置く、量(成長)から質(発展)への転換です。地球環境に注意を払いつつ経済格差の収縮、社会保障の拡充、余暇の増大を重視する経済モデルへの転換を目指すのです。

〇 人々に共有され管理される<コモン>

 資本主義の矛盾が深まるにつれ「資本論」以降の晩年のマルクスの思想が注目を浴びる様になり、アメリカの若者たちが「社会主義」を資本主義より好ましいとみなすようになっているとの世論調査データもあります。あらゆるものを市場原理下で商品化するのでなく、ソ連型社会主義のように国有化するのでもなく、第三の道としての<コモン>は、水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として自分たちで民主主義的に管理することを目指します。また<コモン>は専門家任せではなく市民が民主的・水平的に共同管理に参加することを重視します。

 

□ 本書を読み終えて

 本書は前段で資本主義が地球規模であらゆるものを収奪して環境を破壊しつつあり、とりわけ気候変動(温暖化)は看過できないレベルに達していることを述べ、以後はそれに対する手立てとして晩年のマルクスの言説に見られる脱成長コミュニズムを提言しています。

脱成長コミュニズムが何たるかここでは詳細には述べませんが、本書を読んで日本人が世界3位の量の二酸化炭素を出して地球温暖化の一因をなしていることを知り大変驚きました。

確かに毎朝の新聞には見もしないチラシがたくさん入り、旅行会社からはしばしばツアー案内の冊子が多量に送られてきます。ラジオやテレビでは高額の値引きや下取りをうたったコマーシャルが頻繁に流れます。新モデルとして必要性が疑われるような性能を付加した商品が毎年登場しています。こうした過剰生産過剰消費が二酸化炭素排出を増やしているのです。

 2020年に菅義偉首相はG20サミットで2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標を示し、実現に向けた決意を表明しました。温暖化対策に取り組む姿勢を国際社会に遅ればせながらアピールしたのです。しかし現在の高市首相は原油・ナフサ不足の昨今でも「過度の節約はお願いしない」とし、環境省(石原大臣)も冷房節約指示などの動きはみえません。目立つのは中国に対する小泉防衛大臣の発言ばかりです。

政治学者らの研究によると「3.5%」の人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がると、社会が大きく変わると言います。世界で色々な政変などの事例があるのです。私もエコバッグやマイボトル持参はもとより、古紙へのリサイクルをこまめに行い、冷房を無駄に効かせず、不必要に車に乗らずに歩き、電気製品などはできるだけ長く使い続けるなどのプチ節約を続けたいと思います。

                                            by auf(37/415)