
先発品を希望する時の「特別な料金」の特殊な計算方法
令和6年10月1日から施行されている本人の嗜好で先発品を希望する際の特別な料金について、上記2つの記事で概略を説明している。
ところが、患者さんに「だいたいこのくらいの罰金でしょう」くらいに伝えても、あまり正確ではなかった。どうもその「特別な料金」は特殊な計算方法によるようなのである。
当院の外来師長は、この「特別な料金」について、患者さんに罰金あるいはペナルティと呼ぶのは、言葉として強すぎないか?と僕に言った。
その僕のアンサーだが、実質、罰金なのだが、そういう言い方をすると国民から苦情が出るので「特別な料金」とやわらかく表現しているだけだ。そもそも医療費なら消費税などかかるわけがない。その罰金は、病院や調剤薬局が儲かるわけではなく、国庫に入るので罰金に他ならない。
つまり、国民に対して本人の嗜好で後発品を拒絶すると、このくらい罰金を取りますよ、というものである、と伝えた。
前回、1つの向精神薬の薬価と後発品の薬価(の最高値)の差は、数円以下のことが多く、なおかつ保険点数計算になるので、1日10円(+消費税)になることが多いと記載している。従って、本人が先発品を希望した場合、30日処方でペナルティは330円になることが多い。それを超えるのは比較的最近、ジェネリックが発売された準新薬か、特殊な剤型に限られる。
ところが、僕の概算通りに請求されないことが多かったため、なぜ計算通りにならないか調べてみた。
まず重要なことは、罰金は個々の向精神薬に発生することである。つまり25%の差額は数種類先発品を処方した場合、合算されない。
例えば、ある患者さんが、レクサプロ10㎎錠、デパス1㎎錠、ソラナックス0.4㎎3錠の処方を受けたとしよう。この場合、全て調剤薬局ないし院内薬局にジェネリックの在庫があり、医師が先発品を必要と認めない場合は、3種類の向精神薬全てにペナルティが生じる。
特に注意したいのは、先発品と後発品の差異の25%が1円未満は切り上げで10円(1日)になるが、10円の範囲が広いことである。目安が見当違いになったのは、このルールのためであった。
まず、10円未満は須らく1日10円になる(消費税込み11円)。
しかし10円を超えると、5捨5超入という聴いたことがない計算が行われるらしい。
つまり、15円は切り捨てとなり10円となる。しかし、15.01円だった場合は、切り上げになり20円となる(消費税込み22円)。0を超えて15円まで10円に収束してしまうのである。
このようなことを踏まえ、レクサプロ10㎎錠、デパス1㎎錠、ソラナックス0.4㎎3錠のケースを計算してみる。
レクサプロ10㎎は25%に相当する価格は13.63円になる。従ってレクサプロのペナルティは切り捨てになり1日11円(消費税込)である。
デパス1㎎錠は、25%に相当する価格は0.08円になるため、切り上げられてペナルティは1日11円(消費税込)になる。
ソラナックス0.4㎎3錠だが、1錠の25%に相当する価格は0.05円となるため、3錠では0.15円になる。この結果、切り上げられてペナルティは1日11円となる。
つまり、レクサプロ、デパス、ソラナックスは薬価差が全く異なるのに一様に1日11円になるのであった。
この結果、この3剤について全て先発品を希望した場合、30日処方では990円がペナルティとなる。(後発品の在庫があった場合)。
この約1000円をどう考えるかだと思う。
僕は、患者さんの嗜好で先発品を希望するのは許さないタイプの精神科医なので、患者さんの嗜好に迎合して、先発品必須というサインはしない。
てんかんとか、ジェネリックの抗精神病薬でアレルギーが出るとか幻覚が悪化する特別なケースに限られる。
しかし、「本人の希望で先発品を希望した場合は、ペナルティを徴収されますよ」と言う注意喚起は必ずしている。
そのような時、それでも先発品を希望してペナルティを支払う人もいれば、ジェネリックに替えて良いですという人もいる。
それでも、時間が経てば、次第にジェネリックに替わるケースが多くなるように思う。