「テープ起こし」という仕事をご存じでしょうか。取材やインタビューの録音テープ(今はICレコーダーですね)を、文字に書き起こす仕事です。


偶然紹介記事を見つけ、相場はどのくらいかな?とツィートしたところ、テープ起こしの仕事をしていたという方々から、さまざまなご意見がとどきました。


きびしい納期で安価で仕事していたという方がいました。

相場はもっとずっと高いというご意見も複数ありました。


テープ起こしは、フットペダルを使って音声を止めながら作業するので、足にも、身体にも負荷がかかるきつい作業で、音声を文字に起こすのには、かなり早いベテランでも録音時間の4倍以上かかるそうです。もちろん、校正やこまかな直しをすればさらに時間がかかるということでした。


いろいろなご意見を聞いて、相場は1時間いくらと簡単に言えるようなものではないと痛感しました。


依頼が出版社か個人か、受注が個人か、事務所経由か、また派遣で受けている場合もあり、また仕上がり具合も、聞き違いや誤字脱字だらけの「大惨事」というような状態から、会話の雰囲気まで再現しつつ、校正もしてあってほぼそのまま使えるレベルのものまで、もうピンキリだということがよくわかりました。


もうひとつ実感したことがあります。出版不況による、価格破壊です。


4、5年前まで大手事務所を通してテープ起こしの仕事をされていた方が、今の相場を調べてくださったところによると、大手事務所で1割~3割ダウン、さらに個人で請け負っている場合、3分の1程度の値段で受けているところもありとのことでした。


ライティングも同じです。わたし自身、10年以上前から、イラストと、文章原稿を書いてきていますが、イラスト仕事の単価も、文章原稿も、全般に下がってきているという実感がありました。


しかし今回改めて計算してみると、紙媒体の原稿単価はそれほど下がっているわけではなく(単行本の原稿料は部数で決まるので、原稿単価というものはありません)、急降下していたのは、ウエブ原稿単価でした。


これまで聞いた中で、ウエブ原稿の最低単価は、400字あたり、200円。これは例外中の例外と思いたいのですが、名の知られているサイトでも、プロフィールとURLを掲載するかわりに原稿料はただ、というところがあるので、最低単価は、ゼロ円ですね。


世間ではブラック企業が問題になっていますが、会社やアルバイトの場合は最低賃金、最低時給が決められています。けれど、フリーで仕事を請け負う場合、最低限の保証はなにもありません。


名前を売りたいからとただで原稿を書く人も、おこづかい稼ぎとして400文字200円で原稿を書く人もいるのでしょう。ネットを使ってコネが無くても仕事が受けられるようになったプロ未満アマチュア以上の人が、安く仕事を受けて、単価を下げているという問題もあります。


テープ起こし、校正、原稿のライティング……出版関係のフリーの仕事に共通する問題です。


テープ起こしをされていた方の「時給換算すると、時間をかけて丁寧に仕事をする人ほど、損をする」というためいきのような言葉が胸にささりました。


でもやっぱり。長い目で見れば、きちんとした仕事が評価されると思いたいです。


わたし自身はウエブ原稿でも、紙媒体の原稿でも、どんな仕事も手を抜かず、自分自身納得できるものを提出しているつもりです。自分で納得できなければ、自分でボツにして書き直します。もちろん〆切厳守です。ありがたいことに、原稿の質が安定しているという評価をいただき、継続して依頼いただいています。


時間をかけて丁寧に仕事をする人は、時給換算したら損しているかもしれませんが、その金額以上の、信頼や経験や自信を得ているのだと思います。


今回、テープ起こしという特殊な仕事についてのつぶやきから、ライティング関連に共通する問題が浮かび上がってきました。出版不況に対抗する、特効薬はないのかもしれません。


けれど、最後にたどりついたのは、丁寧にきちんと仕事をしていれば、いつか報われるという、祈りのような想いでした。これはどんな仕事でも共通だと思います。


これからもよい仕事をしていこうと、気持ちがあらたまりました!