ミゲル・セルベートの伝記の巻末に載っていた『プトレマイオスの
地理学』のスペイン語訳からの引用です。
Los galos están dotados de miembros corporales mayores;los de
los españoles son más duros;tienen delgadísimo el cuerpo en la
cintura. Los galos pugnan con mayor ferocidad que arte, y llevan
a la guerra más fiereza que consejo. Los españoles, al contrario.
ガリア人は手足が長く身体も大きい。スペイン人の身体はより厳しく、
かなり腰が細い。ガリア人は残酷な技法を使って争い、戦争の会議
でもより残酷になるように導く。スペイン人はその逆である。
Los galos son más parlanchines;los españoles, más taciturnos,
pues aprendieron a disimular mejor. Los galos son alegres, animados,
inclinados a banquetes, y huyan profundamente de la hipocresía y
la gravedad, que guardan los reconcentrados españoles. Son, pues.
los españoles en los banquetes menos sociales, más ceremoniosos,
afectando no sé que severidad, de la que los galos no cuidan.
ガリア人はおしゃべりである。.スペイン人は隠すことがよいと習って
いるため寡黙である。ガリア人は陽気で活気があり宴会を好む傾向
があり、スペイン人が守ろうとしている偽善や深刻さを避けようとして
いる。スペイン人の宴会は社交的でなくより儀式的であるが、それで
もガリア人が気を配っていない厳格さについてはそうでないふりをし
ている。
『プトレマイオスの地理学』は1535年、ミゲル・セルベートが24歳の
時に出版した本です。前の2冊の本と比べてこの本は直接彼の意見
を述べたものではなく、昔の本を翻訳(ギリシャ語からラテン語)して
その当時手に入る情報から得た知識を付け加えたものです。当時
印刷技術は発展したといってもまだ本は限られた場所、限られた人
だけのものであり、今と違ってネットで簡単に検索することもできない
時代、彼は今まで読んだ本、新しく読んだ本、自分の経験などを照ら
し合わせて膨大な知識の中から必要な言葉を選んでコメントを書き
『プトレマイオスの地理学』を完成させました。彼の頭の中はこの時に
はもう図書館のように今まで読んだ本の内容がすべて整理して記憶
され、必要な時にはいつでも取り出して必要な部分が書ける状態に
なっていました。
ガリア人とスペイン人の違いについてかなり詳しく書いてあります。
16世紀に出版された本なので、現代とは違っている部分も多くあり
ますが(スペイン人が寡黙であるとか)それでも16世紀にはこのよう
なことが一般的だったのでしょう。スペイン人は雨が少なく痩せた
土地の多い国に住んでいるためガリア人に比べて小柄で体も細い
でもだからこそつつましく暮らしていて戦争の時も相手から根こそぎ
奪うようなことはしなかったのでしょう。寡黙でパーティーの時も社交
的でなく厳粛さを重視するなど、現代のスペイン人のイメージとはか
なり違っていますが・・・
少年ミゲルは10代から20代前半、この本を書くまでは自分がスペイ
ン人だと意識することはほとんどなかったと思います。トゥールーズ
大学で、周りのフランス人(ガリア人)や留学生は彼より体は大きく
ても、彼は積極的に宗教に関する演説をして支持者を集めていた、
スイスやドイツに行ってルター派の人と一緒に暮らしていても、自分
の説を完成させようとギラギラしていたし、おそらくすごく生意気な
少年だったと思うので(笑)スペイン人で周りの人より小柄だという
ことも全然気にしないし、寡黙とか慎ましいということもまずなかった
でしょう。でも最初の本の出版でスペインには戻れなくなり異国で
生涯過ごす覚悟を決め、『プトレマイオスの地理学』出版のために
あらためて当時の書物をよく読み、スペイン人はこう思われていた
のかと愕然として、自分はスペイン人であることを自覚していったよ
うにも思います。
伝記の巻末にある引用の中でもスペイン人とガリア人の違いについ
ての記述はかなりたくさん載っていました。これは伝記の作者が作家
ではなく医学博士だったこととも関係あるかもしれません。伝記の
作者は若い頃(独裁政権の時代)イタリアやフランスに留学していま
す。高い目標を持ってはいてもおそらくスペイン人は少数派で母国の
不安もある中での留学生活、ミゲル・セルベートがたった1人でフラン
スに暮らしてスペイン人とガリア人の違いについて理解を深めていた
ことに強く共感したのかもしれません。

