赤ちゃんが泣き出したと聞いて、
急いで店をあとにした。
妊婦生活&赤ちゃんの御世話生活で
体力がぐっと落ちているようで
思うようには走れず、
足がもつれる。
でも、止まるわけにはいかない。
きっと一人でとても寂しい思いを
しているのだ。
まっていて!赤ちゃん!
今、いくわ!
なんとかマンションにたどりつく。
こういう時に限って
エレベーターがなかなかこない。
思い切って階段を使うことにする。
心臓が早鐘を打ち、
爆発しそうになっているけれど、
それでも駆け上がっていく。
家に近づくと、
赤ちゃんの大きな鳴き声が
廊下まで聞こえる。
ああ、一人にしてごめんなさい!
心細かったよね!!
私は赤ちゃんを置いて
でかけてしまったことを
後悔した。
震える手で鍵を開ける。
ドアを開いた、その時だった。
部屋の奥から
眩しい、大きな白い光が
ものすごい早さで私を突き抜けていった。
白い光にはところどころ
ピンクの光があり、
私の中を通過する時に
女性のようなくったくのない笑い声と、
「もう大丈夫よ」という
メッセージが聞こえた。
あまりに急なできごとに
しばらく玄関に立ちつくしていたのだけれど、
はっと我に返り、
急いで赤ちゃんのいる部屋に
行ってみた。
赤ちゃんは、先ほど外に聞こえるぐらい
大泣きしていたとは
思えないほど
ご機嫌な様子で
なにやら一人言をあぶぅ~あぶぅ~と
しゃべっている。
へなへなとしゃがみこみ、
とにかく赤ちゃんを抱っこする。
「ごめんね~
お母さんが悪かったね。
一人にしちゃって本当にごめんね~。」
そう赤ちゃんに詫びて
赤ちゃんの手を握りしめると・・・
赤ちゃんが、産まれてはじめて
声をたてて、笑った!!!
今までも、にやりと笑ったりすることは
あったけれど、
声をたてて、本当に楽しそうに
笑ったのは
これがはじめて!!!
「わ、笑った!
私を見て、笑った!!!」
嬉しくて、立ち上がり、
さらにあやすと、
また声をたてて、
本当に楽しそうに笑った。
嬉しくて、本当に嬉しくて、
思わず赤ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
涙がこぼれる。
わたしが毎日おむつをかえ、
おっぱいを飲ませてきたことは
無駄じゃなかった。
長い夜泣きの夜も、
長時間の抱っこによる腰痛も
全部全部むくわれた!!!
「笑う」なんて、
小さな成長かもしれないけれど、
この子は、今、わたしのことを
受け入れてくれた。
それだけで、充分!!!
子どもの笑顔。
なんて素晴らしい宝物かしら。
なんて可愛らしいのかしら。
この子がこれからも
たくさん笑っていられる
そういう世界を私は
つくっていきたい。
私になにができるか
わからないけれど、
きっときっと何かできるはず!
そう決心し、
赤ちゃんとベランダに出てみると
そこにはとても美しい虹がかかっていた。
赤ちゃんと二人で
いつまでもその美しい虹をながめていた。
夜、帰ってきた夫に、
「このあたりに新しく開店した
お店ってある?」と
聞いてみた。
「いや、不況だからなー。
つぶれる店はあっても
新規開店の店なんてないよ」
わたしはにやりとした。
やっぱりね!
私は今日、大天使のカフェに行ってきたんだ。
ウリエル、ラファエル、そしてミカエル。
その名前を聞いた時にピンときた。
私はこれからも
目に見えない存在たちのサポートを
信じることができる。
そしてこどもたちの笑顔を
永遠に失わないような
未来をつくる一員になれる。
そう確信して、
赤ちゃんと一緒に
気持ちのいい眠りについた。
「ありがとう、大天使たち」
fin