$言葉をつむぐ☆りゅういち




すみれさん、不思議だとは思わないかい


ニューヨーク・イーストビレッジにある3階のアパート

柔らかなオレンジ色に染まっていく街並みを眺めながら
僕はすみれさんと一時間近くも話をしていた。
ニューヨークで過ごす最後の夜が近づいていた。

すみれさんは電話の向こうで
不思議な話をいろいろとしてくれた。
子どもの頃の話、神秘的な話など・・・

話は好きな映画に変わっていった。
「シネマパラデイソ」
すみれさんが大好きな映画と聞かされた。


朝になった
僕がニューヨークを去る日


僕は今、JFK空港から飛び立った飛行機の中にいる。
言葉では表すことのできない複雑な塊が心の中にある。
悲しみ、喜び、寂しさ、懐かしさ・・・うまく言えない。

映画が始まったのでボクはヘッドフォンをつけた。

映画館が火事になり、アルフレッドが盲目の人となった。
少年のトトにアルフレッドが会うシーン。
アルフレッドは手のひらをいっぱいに広げてトトの顔を
覆うようにゆっくりとなでる。
なでているうちにトトの顔が少年の顔からだんだん青年の顔に
変わっていく・・・

映画館が最後崩れ落ちてしまう。ボクは涙が止まらなかった。

いい映画だったよ、すみれさん。
君と話をした、その翌日に「シネマパラデイソ」を観ることが
できるなんて。

すみれさん、不思議だとは思わないかい







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