
初めにことばありき
なぜなのパパ
喉の手術を受けて
言葉が話せなかった幼い息子
父の言いつけを守り
海辺のそばの枯れた木に
重たい二つのバケツで水を運び
水をやる
そばに父親の姿はない
枯れた木に水をやり終えた息子は
樹の根元を枕に仰向けになる
樹と空を見つめて
言葉が話せなかった息子が
最後に初めて言葉を発して映画が終わる
初めにことばありき
パパなぜなの
この映画を
息子アンドリューシャに捧げる
希望と確信を持って
僕の敬愛する
映像作家タルコフスキーの遺作「サクリファイス」
映画の冒頭
父親が枯れた木を植えながら幼い息子に語り出す
ずっと昔のあるとき
年取った修道士がいて僧院に住んでいた
パムベといった
あるとき
枯れかかった木を山裾に植えた
こんな木だ
そして若い門弟に言った
ヨアンという修道僧だ
「木が生き返るまで
毎日必ず水をやりなさい」
毎朝早くヨアンは
桶に水を満たして出かけた
木を植えた山に登り
枯れかかった木に水をやって
辺りが暗くなった夕暮れ
僧院に帰ってきた
これを3年続けた
そして
ある晴れた日
彼が山に登っていくと
木がすかっり
花で覆われていた
ひとつの目的を持った行為は
いつか効果を生む
毎日欠かさずに
正確に同じ時刻に
同じ一つの事を
儀式のようにきちんと同じ順序で
毎日変わることなく行っていれば
世界はいつか変わる
必ず変わる
変らぬわけにいかぬ