
NO THANK YOU !
え、なんで 僕は耳を疑った
ニューヨークのマンハッタン初のおでん屋で
僕が店長をしていた時の話だ
初のおでん屋さんと言ってもスシもあれば
ニューヨーカーが大好きなチキンテリヤキ・ビーフテリヤキもあれば
テンプラも提供している
おまけに僕のアイディアで
テイクアウト・デリバリーで、のり弁当も始めたぐらいだから
要するに日本食なら何でも揃うジャパニーズ・レストランだった
ミッドタウンのブロードウェイ近くに店があった
まわりには日本のテレビ局やアメリカの有名なテレビ局
レコーディング・スタジオ等もあるので有名人もよく来る店だった
久保田利伸 角松敏生 田村正和 浅野ゆう子 王貞治
古いところでライザ・ミネリ
ビル・マーレーは ティーシャツ短パンというラフな恰好で
黒服の年配の付き人つきでスシカウンターに座ってスシを食べ
チップを100ドルづつ寿司職人とウエイトレスに渡し
ウエイトレスの頬にキスをしてお店を出て行った
有名人が入って来ても
ニューヨーカーは別に驚きもせず店で会話と食事を楽しむ
ただ この方だけは違った
この方が店に入ってきた瞬間 空気が変わった
店がざわついてチラチラと有名人を見ていた
映画「エイリアン」シリーズで有名になったシガニー・ウィーバー
映画「ゴースト・バスターズ2」の公開前だったが
同映画の監督アイバン・ライトマンと出演者のダン・アンクロイド
を含めた8名のグループでお店に入ってきた
食事が終わった頃を見計らって
店長である僕は、プラムワインを人数分用意してテーブルへと
近づいた
ON THE HOUSE !
店からのおごりという意味の英語
と言いながら一人ひとり前にプラムワインを置いていった
THANK YOU!
THANK YOU!
と僕に笑顔で声がかかる
そして最後にシガニー・ウィーバーさんの横に僕は立って
最高の笑顔で
ON THE HOUSE !
わずかな沈黙の後
NO THANK YOU ! と彼女の口元から言葉があふれた
え、なんで
20年以上経った今でも なぜシガニー・ウィーバーさんは
お店からの無料のプラムワインを断ったのかわからない