こんにちは。
北海道札幌市の介護と子育ての同時進行・ダブルケア支援研究者の野嶋成美です。
「他人に迷惑をかけてはいけない」
「自分のことは自分でやりなさい」
こうした言葉は、多くの人が幼い頃から繰り返し聞かされてきたものでしょう。
これらは一見すると健全な社会をつくるためのしつけに思えます。
しかし、その価値観が過剰に内面化されていることで、個人が抱える困難を声に出せず、孤立する原因にもなっています。
現代の日本社会では、「自己責任」という言葉が強く根づいています。
失業、病気、家庭問題など、個人が直面するあらゆる課題に対し、「それは本人の努力不足」と片付けられることが少なくありません。
結果として、支援を求める行為自体が「迷惑をかけること」とされ、助けを求めづらい空気が生まれます。
しかし本来、社会とは相互扶助の仕組みによって成り立っています。
人が人に迷惑をかけることは、ある意味で自然なことであり、それを受け止め、補い合う仕組みこそが社会的連帯ではないでしょうか。
「他人に迷惑をかけない」ことが過剰に重視されると、困っている人が声を上げられず、見えない苦しみが放置されてしまう。
その結果として、社会全体が弱く、冷たくなっていくことは否めません。
たとえば、その一例が「ダブルケア」です。
子育てと介護など、複数のケアを同時に担う人たちがいますが、彼らが声を上げづらい背景にも、この価値観が影響しているのです。
ケアの責任が個人や家庭に押しつけられがちな現状のなかでは、「迷惑をかけてはいけない」という前提が、助けを求めることへの心理的ハードルになってしまう。
支え合いの仕組みが必要なのは、「誰もが迷惑をかける可能性がある」社会だからこそ。
その前提に立ち戻ることが、ダブルケアを孤立させない第一歩だと感じています。

