神話の痕跡を歩く 富士吉田市 1.北口本宮冨士浅間神社から神話のベースを探る | 花雫-HANASHIZUKU- あなたに必要な癒やしをやさしくお届けします

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宮下文書の土台ともなる富士信仰。
今回は、富士吉田という土地の風土から、
表向きの北口本宮冨士浅間神社の由緒とは少し違う角度で、
その歴史を紐解いてみたいと思います。

 

もともと、富士信仰の中心地は南麓にある
「富士山本宮浅間大社(静岡側)」でした。
しかし、歴史を山梨側から見てみると面白いことが分かります。

平安時代の貞観の大噴火の際、
「駿河側の祭祀(神への祈り)が
怠慢であったから噴火したのだ」とされ、
朝廷の命によって甲斐国でも浅間神を祭祀することになりました。
これが「河口浅間神社」の始まりです。


富士吉田市に見る信仰
麓にある北口本宮冨士浅間神社は

それ以前からも遥拝の形でお参りをされていました。

歴史として明確なのは戦国時代から
現在の北口本宮冨士浅間神社の神域は「諏訪ノ森」として
パワースポットとして崇敬されていました。

江戸時代の地誌『甲斐国志』などを読み解くと、
この諏訪の森が、
当時の郡内地方の領主であった小山田氏や、
武田氏の手厚い庇護を受けていたことがわかります。
永禄4年(1561年)には武田信玄によって、
富士山信仰の「浅間明神」を祀る立派な
東宮本殿が造営(ぞうえい)されました。

地元が守り抜いたルール

ここで、地元の人々が守り抜いたある
「暗黙のルール」をご紹介します。
 日本三大奇祭として知られる吉田の火祭りにおいて、
「お山(富士山)さんの神輿は、
絶対に(諏訪)明神さんの神輿を追い越してはならない」
という絶対的な掟があります。


富士山の神は偉大だけれど、
この土地を古くから守っているのは諏訪明神である。
その敬意と順列を、人々は祭りの形として残しました。

神様に仕える社家(しゃけ)も明確に分けられており、
諏訪明神を司るのは佐藤家、
富士浅間明神を司るのは小佐野家と、
それぞれ並立していたのです。


この状況が一変したのが、江戸時代でした。

江戸の街から見える、国の巨大なランドマークとしての富士山。
多くの人がその姿に心を奪われる中、
富士山に登れるものは過酷な修行をする一部の修験者だけでした。

そこに宗教的な正当性が加わります。
一般の人でも参加できる「富士講」として体系化されたのです。

「富士山こそが世界の中心(至高の聖地)である」
 仏教的に見れば、あそこは極楽浄土(曼荼羅)である。
 神道的に見れば、あそこは高天原である。
 「私たちは、登ることにご利益がある」と。


この思想の広がりにより、吉田口の状況は劇的に変わります。
甲州街道から江戸からのアクセスが最も良かった吉田口が、
富士登山のメインゲートとなり、空前の大流行を迎えたのです。


さらに享保年間から元文年間(1733年〜1740年)にかけて、
富士講の有力指導者であった村上光清(むらかみこうせい)が、
莫大な私財を投じて境内の大修復・大造営を行いました。

現在私たちが目にしている荘厳な幣殿、
拝殿、神楽殿、随神門、手水舎などは、
このわずか数年の間に一気に整備されたものです。

大名に匹敵する財力を注ぎ込んだ彼は「大名光清」と称されました。
 

この時期を境に、神社の周辺には

富士登山者を案内・宿泊させる「御師(おし)」の家が

数十軒も立ち並び、

吉田口は民衆信仰の巨大な拠点へと発展していきました。

御師の家は、門をくぐると小川(禊のための水路)があり、
中庭を抜けた一番奥の建屋に立派な「御神殿」が鎮座していました

現在いくつかは浅間神社として形を変え残っているそうです。

しかし、光あるところに影があります。
 この爆発的なブームの反面、
本来の信仰の中心地であった静岡の「富士山本宮浅間大社」や、
朝廷より由緒ある祭祀を任されたはずの「河口浅間神社」は
メインルートから外れてしまい、
客を奪い合う激しい訴訟へと発展していきました。


現在、富士山の八合目より上は
「富士山本宮浅間大社」の奥宮の境内地(私有地)とされています。これは、麓のビジネスで吉田口に遅れをとった本家本元が、
頂上という最大のゴール地点を押さえることで
「自分たちこそが正統である」と証明し、
実利を守り抜いたしたたかな歴史の痕跡だったのかもしれません。


この熱狂の後が

次の時代へとつながっていきます。

 


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