奥さんが入院して、一週間が過ぎました。
私と息子の、二人きりの生活がはじまっています。
小学2年生の自閉症男子ですが、
この一週間、おかあさん、とは、ひとことも言いませんでした。
私が「おかあさんと電話する?」と訊いても、
「しない」というばかりです。
「おかあさんへの気持ち」を、彼なりに断ち切っているのでしょう。
入院については、その数日前から、奥さんが息子に、少しづつ予告していました。
彼には、事前の予告、見通し、が必要なんです。
「おかあさん入院するよ。わかった?」「わかった」
ほんとうに、分かったの?とは思っていました。
入院の前の日、
息子は突然、感情不安定になり、遊んでいたプラレールを全部破壊して、リビングに叩きつけました。
1時間くらい激しく怒り、泣きましたが、
そのうちにおさまり、またプラレールを組みなおしました。
その日の夜から「おとうさんと寝る」と言って、私と布団に入るようになりました。
翌朝から、私と一緒に登校しています。
「元気でお勉強を頑張ったら、おとうさんとおもちゃ屋さんにいこうね」と言っています。
「プレマックの法則」の活用です。 *1 *2
支援級の担任の先生には、「今日はもしかしたら、気持ちが不安定かもしれません」、とお伝えしました。
「おかあさんに会いたいと思って、急に教室から飛び出すかもしれませんので。ご配慮お願いします」
(この子には、過去に何度か、脱走の前科があります)
「もちろん、大丈夫です。お任せください」
素晴らしい先生に恵まれたことを実感します。
職場には、出勤が遅れてしまいます。
夕方、私が帰宅する頃まで、放課後デイサービスを緊急で利用できることになりましたが、
毎日とは、叶いませんでした。
同僚の小児科の先生方や、患者さんたちには、ほんとうにご迷惑かけ、心ぐるしいです。
先日は大雪のため、14時半に、学校に息子を迎えに行きました。
「どうぞ」と教室に入れていただき、最後の「ふりかえりの会」を見学しました。
少人数の支援級の1,2年生たちが、あまりにもかわいくて、涙腺にきてしまいます。
みんな純粋すぎる、
私も、子どもたちにかかわる仕事ができること、改めて幸せに感じました。
息子と帰宅して、しばらく家事などをしていると、
あれ?君、どうしたの、その顔は?
息子が顔じゅうに、緑色のマジックで落書きして、遊んでいました。
「ももたろうくーん、かお洗うよ」
タブレットで遊んでいるので、一度くらい呼ばれても、洗面にきません、
「ももたろうくーん、かお洗うよ」
「ももたろうくーん、かお洗うよ」
「Broken Record」のように、同じ言葉を、同じ言い方で、淡々と繰り返し、
CCQ (Calm, Close, Quiet : おだやかに、近づいて、静かに)で指示をだせば、 *3 *4 *5
彼はだいたい3回目くらいで、機嫌よく、小走りで来てくれます。
いいこです。めっちゃ誉めて、可愛がってあげます。
気がつけば、
私の育児は、自然にABAで貫かれています。
それで、まずお湯を私の手にすくって、なんども豪快に、彼の顔をこすって洗います。
息子、大喜びです。
そして、さあ、次は、つめたい水だよ、と予告します。
息子は、よろこびのあまり、きゃあきゃあ言うのですが、何度も洗います。
楽しくて笑えてよかったです。
心配していたのですが、息子は夜、ぐっすり寝てくれます。
こんなにいい子だったんだ、きっと寂しくても、そう言わないんです。
私と同じだな(笑)、と思うと、いとしいです。
おとうさんが守ってあげるからね、と、一日になんどか言っています。
夜、やっと一人になった私は、ずいぶんと肩が張り、なぜか脚にもきています。
知らず知らず、気を張って生きているのでしょう。
いま、もし私が倒れたら、この子を守ってあげられる人がいなくなる、
そのプレッシャーは大きいです。
いままで、何の心配もなく、家を空けることができていたのは、奥さんのおかげだったんです。
いつか退院したら、ありがとうを伝えようと思います。
それにしてもこの大雪、…
*1. https://www.sciencedirect.com/topics/psychology/premack-principle
*2.
プレマックの法則(Premack Principle)は、「おばあちゃんの知恵(Grandma's Law)」とも呼ばれます。
例えば、子どもは「まず野菜を食べたら、デザートを食べられるよ」と言われたり、
「お手伝いが終わったら、そのあとで、野球ができるよ」と言われたりするかもしれません。
低頻度しか起こらない(あまり楽しくない)行動を強化するために、高頻度の行動(ご褒美)が使用できる、という理論です。
*3.
*4.
https://jddnet.jp/wp-content/uploads/guidebook-2020.pdf
(16ページ)
*5.
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1180060417.pdf
(4ページ)
ペアレントトレーニングは米国発祥ですが、CCQという言葉が、米国で言われ始めたわけではないようです。
英語論文を「CCQ」で検索してもヒットしません。
ペアレントトレーニングは、日本では1990年代に、米国のプログラムを参考に導入・再構成されました。
この過程で、親が実践しやすいスキルとして、CCQなどの表現が定着した、ということのようです。