健康格差研究や、ヘルスリテラシーの視点からの健康格差の縮小に向けた取り組み等が進んでいる英国。

 

孤独問題の重要性に気づき、「孤独担当大臣 (Minister of loneliness)」を新設されたのも記憶に新しく、公衆衛生分野の最前線を歩んでいるように感じられます。

 

そんな英国のことを知りたくて、2か月ほど滞在したり、医学専門誌『公衆衛生』で、2018年9月号から2019年8月号まで、英国についての1年間連載を書きました。

 

一方で、実際に滞在してみると、優れた側面だけでなく、格差の大きさを肌で感じることもありました。

 

そうしたこともあり、帰国後も、英国は依然、注目している国なのですが、最近、興味深い本を見つけたので、英国の雰囲気が漂う近所のお気に入りのカフェで、読書。

 

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(一番乗りしたら、誰もいなくて、ラッキー♪ ステキな雰囲気でしょ?)

 

読んだ本はこちら、『チャヴ 弱者を敵視する社会』。

 

 

皆様、「chav(チャヴ)」という言葉を、聞かれたことがあるでしょうか?

 

これは、「生意気で粗野な振る舞いをし、デザイナーズウェア(本物、偽物を問わず)を着る若い下層階級」を表す侮蔑語なのだそうです。

 

そこには、性や人種の差別等にはセンシティブな英国ですが、chav は自己責任なのだから差別されても仕方がないだろうという理屈で、そうした人を差別する風潮にあると書かれていました(この風潮はサッチャー政権から生まれ、広まっているとのこと)。

 

本書を読み、2018年『公衆衛生』11月号でレポートした労働者階級の多いまち、ストーク・オン・トレントを思い出しました。

蝦名玲子.ストーク・オン・トレントの健康格差是正に向けた取り組み:WHOヘルシーシティ認定都市でのインタビュー.ヘルスコミュニケーションと健康な社会づくりを考える~Dr. エビーナの激レア欧州体験より~.公衆衛生82; 11: 864-867, 2018. → こちら

 

(平日、昼間なのに、シャッターの閉まった店が多い街の中心地)

 

2018年の時点で、

  • ストーク・オン・トレントの健康寿命は、イングランド(=英国は4地域により構成されており、イングランドはその一つ)の平均より有意に低く、男女とも約5歳低い
  • 疾病や障害により長期休職したり、退職したり人が多い
  • 教育達成レベルもイングランドの平均よりも低い

等といったことが確認されています。

 

そうした健康格差の対策が急務という状況があったために、ストーク・オン・トレントではヘルスリテラシーを高めるという視点から格差の縮小を目指した取り組みに力を入れていたのです。

 

このとき、行政担当者や専門家(大学教授)にインタビューをしたものの、実際のところ、住民が社会経済的地位(階層)の異なる人たちをどう感じているのかまでは取材できなかったので、『チャヴ 弱者を敵視する社会』はそうした私の理解の欠けている一部を補ってくれる興味深い本でした。

 

イングランドの他の街の様子(写真)は、以下のブログにあるので、ご覧ください。

雰囲気が、街によって、かなり違うのが、わかるでしょう↓

 

健康格差問題が大きいがために、研究や取り組みを先駆的に進めざるを得なかった英国ですが、日本も、他人事ではありません。

 

わが国で健康格差の存在が確認されてから15年以上が経ちますが、格差は縮まるどころか、非正規職の増加等により、貧困率は一貫して上昇傾向にあります。

 

また、英国同様、他者を批判する風潮も大きくなっているように感じられます。

 

健康格差の縮小に向けた研究や取り組みだけでなく、社会学的にも、英国から学ぶことはたくさんありますね。

 

さいごになりますが、健康格差の縮小に向けた取り組みの鍵となるヘルスリテラシーについての体系的な解説は、著書「ヘルスコミュニケーション:人々を健康にするための戦略」に書いていますので、よろしければ合わせてご笑覧ください。