2004年10月23日(土)17時56分新潟県中越地震が起こった。
私はこの日、西本智実の演奏を聴きに
さいたま市文化センターに向かっていた。
南浦和駅で電車を降りて、階段を降り始めた時、
グラグラっと大きな揺れを感じた。
立っていられず、階段の手すりを持って、しゃがんだ私。
かなり動揺したけれど、揺れもおさまり会場へ向かった。

会場に駆けつけた友人も他の聴衆も皆、どこかざわざわしている。
オーケストラが舞台に出てきてチューニングをし始めた時、又揺れた。
会場全体がざわつき、私は椅子にしがみついていた。
天井の照明などはまだ揺れている。
そこへ西本女史が登場。又、小さな余震。。。

集中できない私たちを静めるように、指揮棒を振り演奏が始まった。

『フィンランディア』
『皇帝』ピアノ・横山幸雄
『悲愴』
アンコール
『アンダンテカンタービレ』

今でも思い出されるチャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』
チャイコフスキーは26歳から52歳までの間に
12回のうつ病期を経験したという。
悲愴作曲時には過去を思い浮かべたのか、
それとも当時もうつ病を患っていたのか、
うつ的な精神状態を曲に反映させているのではないかと言う説がある。

私はこの曲を聴くと、メロディーの美しさの奥に潜む、
孤独感、悲壮感を感じることが殆ど。
この2004年10月23日の演奏は全く真逆のものを感じた。
生きる勇気、命の尊さ、命の重さ、大きさ、力強さというものを
音楽から受け取った。

私はこの演奏日より以前、彼女から
ロシアでは2回の大戦と6回(多分)の内戦中でも
いつも劇場は人で溢れていた。
どんな状況下でも皆音楽、芸術の力を知っていた。
と話を聞いたことがあった。
そして阪神大震災を経験した彼女はこの地震で、
ロシアへの留学を決断したと言う。

私は彼女から『生きる力、命の尊さ、力強さ』を
音楽を通して受け取ったのだと思う。
地震により恐れや不安は、一掃された。
この日は音が良くない会場だったけれど最高の演奏を聴いた。

演奏が終わった後、心からの拍手を送ったのは
私だけでなく、会場いる多くの人も同じ。

私のこの日の席は1列のセンターで友人と3人で
演奏後、感動的な出来事に放心状態だった。
舞台上にはコントラバスを片付けにきた演奏家が
私たちに向かって『ありがとうございました!』
と一礼をした。
私たちは驚き、そして感動し
『こちらこそ、ありがとうございました。』と
拍手を送った。

演奏をする側も感動的な演奏だったのだろう。
私たちは音楽を通してひとつになった。
今でもこの演奏は人生の中で一番感動した演奏だ。

この時、音楽の大きな力を体験した。
だから、今現在ではもしかしたら直接的な支援は
難しいかもしれないけれど、音楽家たちの支援は
多くの人々のハートに届くと確信している。

支援を求めている人の元に、大きな力が届きますように。