■中学校教員 船渡川生子(ふなとがわ・いくこ)さん
30代の今だから「もっと勉強しておけばよかった……」と思うものの、「こんな勉強、将来何の役に立つわけ?」と思っていた学生時代の自分。「学校の勉強は、将来本当に好きなことをやりたくなった時のための足固めであり、人間としての基礎体力作りなんですよ」と答える船渡川さんは、中学校の社会科教員。「中学生は、大人と子供の狭間で揺れ、もがきながら大人になろうとしているのが魅力的」と話します。
もともとは考古学好きで博物館学芸員志望。資格を取得するも、学芸員採用枠は狭き門。一生安定した資格が欲しいと中学校教員に狙いを定めますが、夢を捨て切れずしぶしぶ出向いた教育実習。ところが「自分がこう教えたいと考えた授業に、生徒が食いついてきた、その反応の良さが面白かった」と一転して教師を目指します。しかし、札幌市の教員採用も競争率が高く、最初の年は不採用。臨時教員の口を探して2年間勤めた後にやっと採用となりました。
教員はもともと子育てと両立する女性が多く、職場の理解もあり、現在は負担の大きいクラス担任と部活顧問は免除してもらっているそう。ですが、教員の仕事は授業だけではありません。授業と授業の間や昼休みは校内巡回、放課後は学年活動に生徒指導、職員会議。授業準備や教材研究は持ち帰りがほとんど。夏、冬の長期休みも資料整理に補習、研修……と大忙しです。さらに中堅世代の船渡川さんは、後輩から頼りにされることも多いとか。
がむしゃらに突き進んでいた20代。担任だけでなくバレー部や生徒会の顧問を務め、毎日帰宅は夜10時過ぎ。6年目に妊娠するまでは仕事の鬼だったそう。だからこそ「自分が休んでも職場は回ると実感した時はショックで……。でも逆に肩の力が抜けました」。
育児休暇を終えて、復帰直後に長男妊娠がわかった際には、「周囲になんと言われようと、子供は宝だから」と、同僚男性が出産を後押ししてくれたこともありました。子供2人を持つ今、「お迎えは自分しかできないので、集中力や段取り力はアップしました。人に物を頼むことも(笑)」と船渡川さん。大学時代からそばで見てきた夫はもちろん、働き続ける船渡川さんを支え、近くに住む義父母も、仕事が長引いてしまった時の保育園お迎えなど、全面的にバックアップしてくれています。
昨年、コーチングやカラーセラピー、タロットも学んだ船渡川さん。それらはいずれも今の仕事に生かすためであり、「生徒の悩みを引き出したり、能力に光を当てたりするための、あくまでツール」と言い切ります。「自分が好きなのは結局『人』なんです。教員は、コーチでもセラピストでもイベント屋でもあり、私のやりたいことが全部含まれていて、『人』につながっていく。やめたくなる時もあるけれど、それを上回る魅力がこの仕事にはある。これが天職だと、今、そう思います」。
■プロフィール
1973年札幌生まれの東北育ち。北海道教育大札幌校卒。博物館学芸員を目指していたが挫折し3回目の挑戦で札幌市の中学校教員に採用される。その年に、20歳から付き合っていた他大学の部活の先輩と結婚、現在結婚10周年。2005年、2008年生まれの2児の母。自分の時間をなかなかとれない働く母のために癒しの場を設け、輪を広げたいと昨年12月にイベントを主催。今後も働く母仲間との楽しい空間づくりに力を入れたいと考えている。
■船渡川さんのある日のスケジュール
07:00 起床
夫の弁当・朝食作り、子供たちの準備
08:00 保育園へ。化粧は車の中で1分で終了
08:30 始業
授業は1日平均4時間程度、空き時間に猛スピードで自分の仕事をする。
学校図書館司書教諭でもあるので昼休みはない。
17:45 逃げるように職場をあとにする
18:15 帰宅。子供たちに軽食を取らせつつ夕食準備
19:00 夫帰宅。子供の風呂などを頼む。終わり次第家族で夕食
20:00 絵本を読んだり一緒に遊んだり話をしたり。この間に洗濯をすることも。
20:40 寝かしつけ開始。7割の確率で一緒に沈没。ちなみに2人とも授乳中
22:00 起きられれば(あるいは夫が起こしてくれれば)パソコンや持ち帰りの仕事、勉強
24:00 就寝
■中学校教員になるには……
基本的にはまず、中学校教員の教職課程がある大学で必要な単位を取得、卒業することが前提。必ずしも教育学部でなくてもよい。また、それ以外の大学を卒業していても、玉川大などの通信教育で免許状取得に必要な単位を履修できる。その上で、都道府県、あるいは市町村の教育委員会が行う採用試験に合格することが必要となる。これとは別に、臨時教員(非常勤)の採用も随時行われている。私立は、学校独自に募集、採用試験を行っている。
written and photo by ズバーン
