まだ私と主人が付き合い始めた頃、GWに旅行しないかと誘われた。
行き先は当時、主人の弟が赴任していた北京。
旅行大好き、アジア大好きの私はもちろん快諾。せっかくだから上海にも寄ろうということに。
GWだし混むに決まっているからと、エアーもホテルも随分前から予約した。
その日がとても待ち遠しかった。
ところが3月頃から雲行きが怪しくなった。
中国で反日運動が起こり始めたのだ。
4月に入るとさらに活発化し、各地で大規模な反日デモが勃発。
もちろん北京や上海も例外ではなかった。
市内の日本料理店やコンビニが襲われた模様が連日テレビで報道され、南京では虐殺記念館の前で日本人が土下座させられたという話まで流れた。
5月にはメーデーもある。
ますます危険なのでは……と、日々更新される外務省の渡航情報を見ては迷う。
各旅行会社が次々とツアーを中止する中、個人旅行の私達はあくまでも自己責任で決行することに。
主人の弟は全く問題ないと言う。
確かに、北京に入ってしまえば安心だが、上海では2人で行動しなければならない。
ものすごく緊張した。空港からホテルに着くまでは。
しかし、ホテルに着いてしまうとそんな気分は吹っ飛んだ。
当時世界一の高さと言われたグランドハイアット上海。
その高さは霧がかかると上まで見られなくなるほど。
豪華なホテルと絵に書いたような夜景に浮かれた私達は、緊張しつつも上海を思う存分楽しんだ。
地方から大都会上海へ集まってくる人々。
「日本人ってバレたら襲われるんじゃ……」という心配はだんだん薄れていった。
雨の上海。外難(バンド)の眺め。
GWだというのに日本人の姿は皆無という奇妙な感じではあったけれど、それがさらに異国を感じさせ、思い描いた通りのオリエンタルな上海に大満足のまま北京へ。
北京での目的はもちろん万里の長城に登ること。
あの壮大な万里の長城を体感してみたかったのだ。
ところが、ここでも人、人、人の波。
人でまったく進めないという、考えられない人の数。
家族連れが多く、子供達がみんなめいっぱいオシャレをしているのだ。それもちょっとやそっとのオシャレではなく、結婚式レベルのドレスアップ。
GWに万里の長城へ出かけるというのは、彼らにとってそれだけ大イベントなんだということを知った。
もう緊張や恐れはなくなっていた。
中国全土から様々な民族が集まって来ているここでは、誰一人として私たちが日本人だということを気にする人などいなかったのだ。
written by kaorin

