この夏、東洋文庫ミュージアムでは、
夏にピッタリな展覧会“「怖い」本”が開催されています。
こちらは、約100万冊(!)を誇る東洋文庫の蔵書から、
「怖い」を切り口に古今東西の本や資料を紹介するもの。
まずはじめに展示されていたのは、天台宗の僧・源信による『往生要集』です。
『往生要集』によれば、人は生前の行いによって、
「六道」のうちのいずれかに転生するとされています。
ベストな転生先の天道に対して、ワーストな転生先が地獄道。
この本では、そんな地獄道での怖い罰の数々が詳細に解説されています。
もし、この本がなかったら、日本人は地獄の怖さを知らなかったのかも。
あの占い師の決め台詞も、「あんた、地獄に堕ちるわよ!」になっていなかったかも。
なお、人が死後の世界に旅立った後も、
物理的にその肉体は現世に留まり続けます。
その肉体は、どのように変化していくのか。
野外に置かれた遺体が朽ちていくさまを、
九段階に分けて描いたのが、《九相図巻》です。
本展では、肉体を鳥獣に食べられている5段階目と、
食べ尽くされて骸骨となった6段階目が紹介されていました。
面影はまったくないですが、この遺体の主は絶世の美女だったそう。
どんな美人も最終的には骨になる。
だから、憧れるのをやめましょう。
そんな感じで、仏僧の色欲を絶つ修行に使われたとされているそうです。
さてさて、あの世や死の怖さに続いては、
妖怪や幽霊といった怪奇的な怖さが紹介されています。
それらの中には、日本各地の河童を紹介する『水虎譜』や、
江戸時代に茨城県に漂流したUFO・・・とされるうつろ舟の図など、
オカルト好きの心をくすぐる書籍や資料も多数紹介されています。
米どころで知られる魚沼の暮らしを書き記した本ですが、
その中に旅人の荷物を代わりに背負ってくれる心優しいUMAが登場するそうです。
“猿に似て猿に非ず”な外観を持つ、
毛むくじゃらのそのUMAの名は、異獣とのこと。
(↑ざっくりしたネーミングすぎるだろ!)
ちなみに。
「鶴齢」で知られる魚沼の青木酒造は、
そんな異獣をモチーフにした日本酒「雪男」を醸しています。
ラベルの雪男をよく見ると、ちゃんと荷物を背負っていました。
なお、本展では日本だけでなく、
アジア諸国の怪奇も紹介されています。
例えば、清代の文人・袁枚によって書かれた怪異小説『子不語』。
その5巻で、こんなエピソードが書かれているようです。
劉が絵を描いていると、突然遺体が起き上がりました。
しかし、遺体は襲ってこなかったので、絵筆を動かし続けたのだとか。
その時点で遺体よりも、劉のが怖い気もしますが、
さらに、劉は「動く死体は箒を恐れる」ということを思い出し、
やってきた棺の担ぎ屋たちに遺体を箒で叩かせたのだそうです。
なお、この動き出した死体が、「走屍」ことキョンシー。
映画『霊幻道士』のおかげで、コミカルな印象がありましたが、
実際のキョンシーのビジュアルは、パネルで紹介されていたように、
『ウォーキング・デッド』に出てくるゾンビに近かったようです。
さて、死後の世界も、怪奇の世界も怖いですが、
結局のところ、なんだかんだでもっとも怖いのは、
ヒトコワ・・・つまり、人間自体が怖いような気がします。
本展では、キリスト教の殉教者を紹介した本や、
当時の中国の刑罰の数々を紹介した本、
どれもインパクトがありましたが、
中でも印象深かったのが、こちらの『瓦版集』。
絵がほのぼのとしたタッチであるため、
パッと見は、そこまで怖さは感じませんが。
常陸国の名主・幸七(享年33歳)の妹・たか(26歳)が、
兄を毒殺して村長となった与右衛門(57歳)を江戸の浅草で斬り殺し、
7年越しの仇討ちに成功したことが報じられています。
今も昔も、復讐モノは人気なのですね。
なお、本展のラストでは、地震を起こすと考えられていたナマズを描いた鯰絵や、
ペストから逃れるため郊外の別荘に引きこもる(ステイホーム?)男女10人が、
退屈しのぎに話をするというていで描かれたボッカッチョの小説『デカメロン』など、
天災や病気の怖さを描いた本や資料の数々が紹介されています。
個人的にイチオシなのは、『内景図』。
人体に住むと考えられていた寄生虫を描いた作者不詳の江戸時代の巻物です。
身体の不調や病気の原因はコイツらなのですが、
ゆるキャラのような愛らしさがあり、どうにも憎めません。


















