東京藝術大学大学美術館取手館に行ってきました。
そんな「ウォールミュージアム構想」は、
館内のトイレに至るまで徹底されていました。
洗面器が絵付けされていただけでなく、
大藪雅孝《裸婦》(男子トイレ洗面器絵付)
4つ並んだ小便器にも絵付けがされていました。
作者は、版画界を代表する銅版画家・中林忠良さん。
作品名は、《男のための小便器》とのこと。
青や黒はまだ、美しさを感じましたが、
赤に関しては、前の人が血◯したのかとギョッとさせられました。
ただ、小便器での驚きは可愛いもの。
個室を覗いた際には、思わず「ヒッ!」と声を上げてしまいました。
トム・ヘネガン《TOTOM》(男子トイレ衛生陶器絵付)
今まで数多くの美術館で、トイレを観てきましたが、
この取手館のトイレが、断トツでアートなトイレでした。
・・・・・と、トイレの話はこれくらいにしまして。
現在、取手館で開催されているのは、“藝大取手コレクション展 2025”。
上野とは別に、取手には約13000件の作品が収蔵されています。
そこから選りすぐられた作品の数々を、3つのセクションに分けて紹介する展覧会です。
(注:展示室内は一部撮影可。写真撮影は、特別に許可を得ております。)
まず最初のセクションは、「自画像:1925→2025」。
藝大には、明治31年頃から始まり現在に至るまで、
卒業制作として制作された自画像を買い上げる伝統があります。
そうして収集された自画像は、約7000点にものぼるとか。
本展ではその膨大な自画像コレクションから、
1925年、1975年、1993年、2025年の4つの年代のものをセレクト。
時代の変化ともに、自画像のスタイルも変化する様を紹介しています。
100年前の自画像は、画家としての自分を描いている印象を受けましたが、
その50年後の1975年の自画像は、個としての自分や内面を描いている印象。
今年2025年の自画像にいたっては、
フェイスパックに化粧を移したものであったり、
自身を象ったフィギュアであったり、もはや絵画ですらないものもありました。
続いてのセクションは、「卒業・修了制作:学びの集大成」。
原則的に自画像は全員買い上げられるようですが、
卒業・修了制作に関しては、特に優秀なものに限り、買い上げられることもあります。
本展ではその中から、小瀬村真美さんの《薇-sweet scent-》や、
千住博さんの《回帰の街》、藤田謙さんの《「始まり」と「終り」》などを紹介。
今年の卒展に出展され、SNS上でも話題になった、
會見明也さんの《残像偶像no.3 [境界面上において変わりゆく自他について]》も出展されています。
パッと見は、デジタルのイメージのように見えますが、
実は、AIに生成させた画像をデジタル上でコラージュし、
その画像をもとに、會見さんがアクリル絵の具で描いたもの。
デジタルに見えて、実はアナログな作品です。
さてさて、取手館が収集しているものは、藝大生たちによる作品だけではありません。
本展を締めくくるセクション「過去に学ぶ:未来へ繋ぐ教育資料」では、
藝大の創立時より収集されてきた教育資料の数々が紹介されています。
高村光太郎《獅子吼》
それらの中には、デッサンの授業には欠かせない石膏像や、
《男性裸体トルソ》、《アントニヌス・ピウスの胸像》
本邦初となる国内産のオルガン、
才田光則《オルガン》
さらには、日本画家の前田青邨旧蔵のハニワの頭部もありました。
《埴輪 兜をかぶる男子頭部》
そうそう、ハニワといえば。
ハニワが全体にあしらわれた花瓶も展示されていました。
寺前為一《埴輪模様花瓶》
制作されたのは、なんと大正15年とのこと。
一瞬、さくらももこさんの作かと思いましたが、
冷静に考えたら、そんなわけはありませんでした。
九谷焼の陶芸家・寺前為一が図案科を卒業する前に制作したものだそうです。

ちなみに。
昨年、取手館の建物と繋がる形で、
コンクリートのバケモノのような建物が竣工しました。
その正体は、収蔵棟。
普段は非公開となっていますが、
原則として毎週火曜日に、収蔵棟2階にある「魅せる収蔵庫」が、
各回15名定員。事前予約制の先着順。
これほど立派な収蔵棟ができたので、
しばらく取手館は収蔵には困らなさそう。
取手館のコレクションは、ますます充実そうです。























