忠臣蔵―五段目・斧定九郎 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。

都内の某浮世絵専門美術館の学芸員さんたちが震撼した・・・



そんなキャッチコピーを思わず付けたくなる浮世絵展が、

今週26日まで、UKIYO-e TOKYOにて行われているそうです。


というわけで、会期が迫っているため、

早速ららぽーと豊洲へと、足を運んできました。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-UKIYO-e TOKYO  アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-UKIYO-e TOKYO



その衝撃の浮世絵展とは、 “忠臣蔵―五段目・斧定九郎”

先週まで、太田記念美術館では、

“いざ討ち入り!浮世絵忠臣蔵” という忠臣蔵をテーマにした、

ちょっとマニアックな浮世絵展が開催されていましたが。

それをさらに上行くのが、この “忠臣蔵―五段目・斧定九郎” 展。

全部で十一段からなる歌舞伎の 『仮名手本忠臣蔵』 。

その五段目だけにスポットを当てたという超絶マニアックな浮世絵展です。

忠臣蔵と聞いて、普通の人が連想する 「殿中でござる!」 や、

「おのおのがた、討ち入りでござる!」 のシーンは全く出てきません。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-斧定九郎展



しかも、ポスターに、“ご存知、斧定九郎!” と書かれていますが。

歌舞伎に詳しくない僕からすれば、


「誰が、ご存知やねん!!」


と云った具合です。。。

どれだけ、世の中の人が、

『仮名手本忠臣蔵』 の五段目をご存知である前提で話が進んでいるのでしょうか。



さてさて、何も知らない手探り状態で、会場へと足を運びましたが。

さすがに五段目ばかりの浮世絵展ですので、

なんとな~く、どんなあらすじなのかは理解しました。

展示されていた浮世絵を使ってご説明いたしましょう。


北尾政美 《浮繪仮名手本忠臣蔵 五段目》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-浮絵 仮名手本 忠臣蔵 五段目
(クリックすると拡大されます)



まず登場しますのは、画面の左に小さく描かれている男・早野勘平

彼の主君は、お馴染みの浅野内匠頭です。

その主君が、なんやかんやあって切腹するその日、

何と、勘平は腰元のお軽という女の子と密会デートをしておりました。

主君の一大事に、イチャイチャしていたことを咎められる勘平。

汚名返上とばかりに、どうしても討ち入りメンバーに加えてもらいたいところだが、

そのためには、50両が必要だという。

お金が無く途方に暮れる勘平。。。


それを見兼ねた勘平の父・与市兵衛

50両を何とか調達しようと、とある方法を思いつくのです。

それは、義理の娘であるお軽を、遊郭で働かせるというとんでもないもの。

この父にして、この子あり。

「お金がなければ、フーゾクで働いてもらうかのぅ」 を、まさか自分の義理の娘に適用するとは。

そんなこんなで、50両をゲットした与市兵衛が、

ほくほく気分で山道を歩いていると、そこに現れたのが、ご存知 (?) 、斧定九郎

与市兵衛は、斧定九郎に50両を強盗されてしまいます。

悪銭身につかず。与市兵衛は50両も、そして、あわれ命も奪われました。


ところが、さらに次の瞬間。

たまたま同じ場所で猟をしていた勘平が、目の前に飛び出てきたイノシシに鉄砲を放ったのです。

しかし、イノシシには当たらず、その流れ弾は、斧定九郎に命中。

悪銭身につかずパート2。50両を奪いたての斧定九郎も、あっけなく命を奪われました。


ちなみに、この後、勘平は誤って撃ち殺してしまった斧定九郎に駆け寄り、懐から50両を発見します。

「お、これで、討ち入り出来ちゃうよ!」 とばかりに、お金を失敬してしまった勘平 (もとは自分の金ですが)

この罪の自責の念にかられて、最終的には自害するそうです。

それは、また六段目の話。




結構な長さになりましたが、これが五段目の内容。

今回の浮世絵展で展示されているのは、

この五段目のシーンが描かれた浮世絵と、

この五段目に登場する稀代の悪人・斧定九郎の絵ばかり。



テーマが狭いだけに、どの作品にも、似たような感想しか抱きませんでしたが。

ちょっと毛色の違う印象に残った作品もありましたので、それらを紹介いたしましょう。


歌川国芳 《木曽街道六十九次之内 大井 斧定九郎》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-《木曽街道六十九次之内 大井 斧定九郎》



木曽街道の宿場町・大井を描いた一枚。

ご存知斧定九郎が描かれているわけですが、

特に彼と大井に関係があるというわけではないそうです。

では、何で、ここに描かれているのかと言いますと、

斧定九郎は、勘平の父・与市兵衛に向かって、

強盗する前に、 「おーい!おーい!」 と呼びかけたのだそうで。

おーい・・・おおい・・・大井

はい、ダジャレです。



歌川国貞の 《河原崎権十郎の斧定九郎 桃井若狭の助 早野勘平》


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-勘平



とても江戸時代の浮世絵とは思えないポップな印象。

何となく、黒の背景部分を見て、

パックマンを連想してしまったのは、僕だけでしょう。



ラストは、国芳の弟子・月岡芳年の作品。

五段目の名シーンを、蝙蝠で例えた 《蝙蝠之五段目》 です。


アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-蝙蝠之五段目



結構リアルな蝙蝠です (笑)


ちなみに、斧定九郎に欠かせないアイテムが、破れた蛇の目傘。

他の浮世絵の斧定九郎さんは、もれなく破れた蛇の目傘を持っているのですが。

この斧定九郎蝙蝠が持っているのは、コウモリ傘。

蝙蝠だけに。




マニアックな企画でしたが、

ここまで突き抜けてマニアックだと、潔さすら感じます。

星

1ツ星。

UKIYO-e TOKYOさんには、これからも独自の道を歩んで欲しいものです。





美術ブログ界で独自の道を歩むこのブログも応援下さい。

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ