● 「日本美術が笑う」展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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道路と土手と塀・麗子弾絃図・麗子洋装之図

 

さて、今回ご紹介するのは、前々回と同じく六本木にて開催されている美術展。
六本木ヒルズ内にある森美術館で、5月7日まで開催中の“「日本美術が笑う」展”です。

 

その名の通り、ずばり「笑い」をテーマにした美術展。

毎回毎回、『堅苦しいイメージがある美術展に笑いのメスを!』というコンセプトのもと

お送りしているこの“とに~の美術展へ行こう!”シリーズ。
今回ばかりは、美術展そのものが「笑い」がテーマです。

僕が頑張る必要はなさそうです。あぁ、これは何とも楽な展開です。


この美術展には、紀元前数千年前の土偶から、20世紀の絵画までの様々な日本の美術品が、

「笑い」というキーワードのもと集められています。
笑っているような埴輪や、微笑をたたえた仏像、何ともユニークな動物の絵。

思わず笑ってしまうシーンを描いた絵もあれば、凍りつくような冷笑を浮かべた絵まで。

もうありとあらゆる「笑い」が、ここにあります。


ですから、ただ観ているだけで、心が温かくなって参ります。
いやぁ、「笑い」って、本当に素晴らしいですね。

 


全体的には、「笑い」そのものに関する作品が多く、「笑える」作品は、そんなにはありません。

その「笑える」作品のうち、とりわけ笑ってしまった作品がありましたので、ご紹介。

 

それは、幕末・明治の画家である河鍋暁斎 作 《放屁合戦絵巻》

…えーと、タイトルでだいたい想像がつきますね。

結構な長さの巻物に描かれておりますが、まぁ、内容は実にくだらないです。

昔から、人は‘おなら’ネタで笑っていたのですね。

100年経っても、笑いのレベルは、まったく進化しちゃいません。
往年のあの番組・ボキャブラ天国風に評価するなら、この作品は『バカパクの9・8』でしょうか。

 


と、この“「日本美術が笑う」展”。作品数は、あまりたくさんはありません。

じっくり観ても、せいぜい腹6分目といったところで出口。
ところが、出口を抜けると、同時開催されている

“笑い展 現代アートに見る「おかしみ」の事情”の会場につながっているのです。

1枚のチケットで何と2つの美術展が楽しめてしまいます。1粒で2度美味しい。
こちらの美術展に関しては、字数の関係上、紹介しきれませんので、ご容赦を。


今回、この美術展に対して、一番感心したのは、「笑い」に関する美術品を、

ただ何気なく展示しているのではなく、展示の方法にも、すごくこだわっていること。
展示会場を黒一色で構成し、掛け軸や屏風なども今までにはない斬新な手法で展示しています。
さすがは、六本木。さすがは、ヒルズ。


 

さてさて、いつものように、一人の芸術家をご紹介。

個人的には、5点も作品があった伊藤若冲も捨てがたいのですが、

やはり、今回の目玉は岸田劉生でしょう。


岸田劉生は、大正の鬼才と呼ばれた画家です。

岸田劉生の名前は知らないという人でも、

重要文化財に指定されている彼の代表作 《麗子微笑》 は教科書で見たことがあるのではないでしょうか。

その際、おそらく多くの人が“うわっ、気持ち悪い絵だな!”と思ったことでしょう。
ちなみに、左上の絵は、あまり有名な絵ではないのですが、

僕の好きな絵のひとつで 《道路と土手と塀》 という絵です。これもまた劉生の代表作。

 


今回、僕は、この岸田劉生の芸術を読み解くキーワードが、

なんと【チョコエッグ】にあるという驚愕の事実を見つけました。


劉生は、ゴッホやデューラーに影響を受けた洋画家です。

が、その作品の内面で、日本的な美の本質

(彼は、それを‘でろり’の美と表現しました。わかるような…わからないような…)を表現しようとしました。
これは、チョコ〔西洋〕の中に、日本の動物やペットのフィギュア〔日本〕が入っている

【チョコエッグ】と、まさに同じ構造。

 


…いや、これだけで【チョコエッグ】がキーワードと言っているのではありません。

 


劉生の作品と【チョコエッグ】には、更なる共通点があるのです。
劉生は自分の娘や単なる土手を、

【チョコエッグ】のフィギュアを制作した海洋堂は日本の動物やペットを、

題材自体は取り立てて‘美’であるとはいえないもの(←麗子さん、ごめんなさい)を、

ただひたすら写実的・精巧に作品にすることで、芸術的なものへと高めました。

 

本物よりも、本物に近づけた作品の方に‘美’が宿ったのです。
もちろん、それらが芸術として評価された理由に、色彩・彩色にもあることは言うまでもありません。

劉生の色使いは、実物を観ると、その強烈さに圧倒されてしまうのです。


そうして、作りあげられた作品は、ともに大衆に瞬く間に受け入れられたのです。

劉生は、当時の画家には珍しく、作品が高い値段で取引された画家でした。
【チョコエッグ】のフィギュアも、いわゆるプレミアがついたものは、

売価の150円の10倍以上の値段がつきました。

全盛期、一番プレミアがついたのはツチノコで、ヤフオクで落札された価格は、何と6万円。
ちなみに、劉生の《毛糸肩掛せる麗子肖像》という絵は、3億6千万でオークションで落札され、

これはオークションにおける日本画最高落札額だそうです。

 


1999年9月に発売され、箱ごと買う“大人買い”という言葉まで生んだ【チョコエッグ】

しかし、その人気は3年と持ちませんでした。

2002年2月4日。海洋堂と販売元のフルタ製菓との関係が悪化。

以後、海洋堂は、チョコQへと移っていき、過熱していた【チョコエッグ】ブームは終息を迎えました。
瞬く間にブームが去った【チョコエッグ】同様、岸田劉生もまた38歳という若さでこの世を去るのです。


【チョコエッグ】のブームは去りましたが、【チョコエッグ】が創めた“シークレット”という手法は、

今では、すべての食玩に受け継がれています。


最後に、岸田劉生の麗子シリーズ(全60点)にも、

そんな“シークレット”が存在するということをお伝えしておきましょう。

それは、遺族のもとに残された 《麗子未完》 という絵。

この作品は、なかなかお目にかかれる機会がないそうです。

そう言われると、見たくなるではありませんか。


“「日本美術が笑う」展”では、全60点のうちの

《麗子弾絃図》 (写真・中)と 《麗子洋装之図(青果持テル)》 (写真・右)の2点を見ることができます。


 

さぁ、いつの日か麗子シリーズをコンプリートするために、まずは“「日本美術が笑う」展”へ行こう!