我が家の 近所に
そのアパートが建てられたのは
4年前
一人暮らしだった おばあさんが
認知症になって
老人ホームに移った 後
そこには
2階建ての
小洒落た ワンルームアパートが
建った
40坪弱 容積率100%の土地にも
かかわらず
なんと! 部屋数13
我が家の周りにある ワンルームは
学生向けの
本当に狭くて
その代わり お手頃値段の
物件が多くて
地方の 広々した空間で
暮らしていた人たちが住んだら
さぞ 狭苦しく感じるだろうな
と 思っていたけれど
このアパートの狭さは
その中でも とびっきりだった
実は
アパートが できたばかりの時
工事の人に 頼んで
ご近所の方と一緒に
中を覗かせてもらったことが ある
ズーズーしいな
この ご近所オバサン
一部屋あたり 6畳ほどのスペースに
玄関・バス・トイレ・キッチンを
入れ込んであって
実際の部屋は 3畳ほど
しかも その半分は
天井を低くして ロフトを作ってある
多分 想定として
寝るのは ロフト
昔の寝台列車のように
うまく コンパクトに作られては いる
作られてはいるけど
長時間 そこで生活するとなると
さすがに 気分が滅入るかも
そんな感じの部屋で
案の定
入居した人たちに
長い時間 家で過ごすひとは
少なそうだった
だって
長々 シャッターが閉まってたり
部屋が暗かったり
ご近所オバサン
チェックもキビシイ
そして マンガに描いたように
早朝だったり 深夜だったり
もちろん 昼間にも
タクシーが 頻繁に止まっていて
カジュアルな服の 若い人が
乗り降りしていて
一体 何の仕事を
している人たちなんだろう
犯罪でなければいいけど
と
ご近所皆で 本当に心配していた
…んだけど
ある日
人通りの少ない
そのアパートの 前の道で
台本のような物を 手に持ち
身振り手振りを交えながら
セリフを覚えているひとを
見かけた
また 別の日
ふたりで 頭を突き合わせて
台詞のようなものを
言い合ったりしているひとを
見かけたり
あれ?
もしかして 彼ら
俳優とか 漫才師
目指してる人たち?
そう閃いたら
その 謎のタクシーも
付き人みたいなことをしていて
タクシーで
売れてるタレントや 漫才師を
仕事場に 送迎しているのかも
なーんて 勝手に
ストンと 腑に落ちて
もちろん 事実かどうかは
わからないけど
そこで
それを 確信に変えるべく
私は 年末年始
若手漫才師が出てくる 番組を
見つけては 観て
錆びた頭を フル回転させ
彼らの顔を
記憶の襞にインプットした
そして
もしかして アパートの住人の中に
テレビで見覚えた顔が いないかな
と
アパートの前に停まる タクシーと
遭遇する度に
中の人を ガン見してるんだけど
残念
この ご時世
マスクに阻まれて
未だ 確認が取れない
すべてが
私の妄想かもしれない
でも
漫才師でも 俳優でも なんでも
もし アパートの住人が
夢を抱いて 頑張っている
若い人だったら
何ができる ってわけじゃないけど
ご近所のよしみ
オバサンらしい 図々しさで
すれ違うたびに
一声 応援の声がけをしたり
それが メーワクだったら
心の中で エールを送るだけでも
させてもらいたい
そう 思ってるんだよね
だって
なにより そこは
よく知っている おばあさんが
ずっと住んでいた
建物は替わったけど
私にとって
ちょっと 特別な思い入れのある
場所だから

